熱余韻 ~ 恋は終わっても、思い出とあの砂浜はまだ熱い ~
2026/06/17
恋は終わっても、思い出とあの砂浜はまだ熱い。
なんだか昭和の青春ドラマみたいですが、今回はそんな話です。
よく晴れた、とても暑い日。
午後になって雲が出てきました。
さっきまで強烈だった日差しも弱まり、太陽は雲の向こうへ隠れています。
ところが窓の近くへ行くと、
なんだかムワッと暑い。
直射日光は当たっていないのに、窓廻りだけがまだ熱を持っているような感覚です。
私は以前から、この現象が少し気になっていました。
太陽が隠れたのなら、暑さも一緒に消えてよさそうなものです。
それなのに、なぜ窓際はまだ暑いのでしょうか。
そんなことを考えていた矢先、先日行った透明遮熱フィルム比較試験で、ひとつ面白い出来事がありました。
試験そのものは大成功でした。
NANO70S、NANO80S、アンフェイド90、ブランクガラスを並べて温度変化を測定したところ、NANO70Sは非常に優秀な結果を示しました。
ところがです。
試験終了後、何気なくガラスを触ってみると、
「あれ?」
NANO70Sを貼ったガラスが妙に熱いのです。
遮熱性能が高いことは試験結果からも分かっています。
それなのに、なぜガラスはこんなに熱いのでしょう。
本来ならここで試験終了です。
ところが私は、この違和感が気になって仕方ありませんでした。
そこで改めて、日射熱取得率や光学特性値を見直してみました。
すると、ひとつ気付いたことがありました。
日射熱取得率には、ガラスを透過した熱だけではなく、ガラスやフィルムが一度受け止めた熱が後から室内へ戻る分も含まれているのです。
例えば、NANO70Sの日射熱取得率は約54%。
そのうち約42%はガラスを透過した熱ですが、約12%はガラスやフィルムが一度受け止め、その後室内側へ戻した熱と考えることができます。
NANO80Sでは約9%。
私が現在注目している”HEATUNE”では約8%です。
もちろん、これだけでフィルムの優劣が決まるわけではありません。
NANO70Sは現在でも透明遮熱フィルムを代表する高性能製品です。
今回私が興味を持ったのは性能の優劣ではなく、
「熱はどこへ行ったのか」という部分でした。
遮熱フィルムは熱を消しているわけではありません。
透過する熱もあれば、反射する熱もあります。
そして吸収された熱は、やがてどこかへ放出されます。
私は長年、熱割れ計算にも携わってきました。
その経験からすると、ガラスがどれだけ熱を抱え込むか。
これは快適性だけでなく、熱割れを考える上でも無視できない要素です。
そこで私は、このあとから戻ってくる熱に名前を付けることにしました。
『熱余韻』
お寺の鐘を撞くと、
ゴーン……という響きがしばらく残ります。
熱も同じです。
日射を受けた窓面は、すぐには冷えません。
しばらく熱を残しながら、ゆっくりと熱を放出します。
そう考えると、以前から気になっていたあの現象も少し説明がつく気がします。
よく晴れた、とても暑い日。
太陽は雲に隠れた。
それなのに窓際へ行くと、まだムワッと暑い。
もしかすると、その正体の一部はガラスやフィルムに残った「熱余韻」なのかもしれません。
今回の透明遮熱フィルム比較試験は、本来なら温度変化を確認して終わるはずでした。
ところが私は、試験結果よりも気になるものを見つけてしまいました。
NANO70Sのガラスが熱い。
曇ったのに窓際が暑い。
一見すると別々の現象ですが、実は同じ話だったのかもしれません。
もちろん、熱余韻はメーカーのカタログに載っている言葉ではありません。
私が勝手に名付けただけです。
しかし、窓面で起きている熱の動きを考える上で、案外大事なヒントになるのではないかと思っています。
高性能なフィルムを選ぶこと。
それはもちろん大切です。
でも私は最近、「どれだけ熱を止めたか」だけではなく、
「熱がどのように残り、どのように消えていくのか」
も気になっています。
どうやら、この話はもう少し続きそうです。
熱は窓面で呼吸している。
そして、その呼吸には『熱余韻』があるのかもしれません。
- Rossi
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