Insulation Test vol.2
Vol.1の試験方法を見直した再比較試験
断熱フィルムの効果を再検証しました
前回の断熱フィルム実証試験では、断熱フィルムを施工した試験体とフィルム未施工の試験体を用いて、加熱後の内部温度およびガラス表面温度の変化を比較しました。
しかし、測定結果では両試験体に大きな温度差は確認できず、断熱フィルムの性能を明確に可視化することはできませんでした。
前回の試験結果を検討したところ、試験方法には次の2つの課題があったと考えました。
熱容量体であるガラスサンドの量が少なかったこと
ガラスサンドと断熱フィルム施工面が正対していなかったこと
前回は、円筒形グラスの底部にガラスサンドを配置し、グラス側面の内側に断熱フィルムを施工していました。
この配置では、ガラスサンドから放射される熱がフィルム施工面へ直接届きにくく、断熱フィルムの遠赤外線反射特性を十分に評価できていなかった可能性があります。
そこで今回は、熱容量体を増量するとともに、加熱したガラスサンドを断熱フィルム施工面と正対する位置に配置しました。
試験箱の上部をA4サイズのガラスで塞ぎ、その箱内側の面に断熱フィルムを施工することで、熱容量体からの放射熱がフィルム面へ直接向かう構造としています。
本試験では、前回の試験方法を見直したうえで、フィルム未施工ガラスと断熱フィルム施工ガラスの温度変化を再度比較しました。
(注意)
本試験はJIS試験やメーカー試験ではありません。
実際の住宅窓ガラスでは、ガラスの種類、寸法、サッシ、方位、室内外温度、風、壁や床などの蓄熱条件によって熱の移動が異なります。
そのため、本試験結果は実際の建物における断熱性能を保証するものではなく、一定条件下での温度変化および放熱挙動を比較するための参考データとしてご覧ください。
試験目的
本試験は、前回の断熱フィルム実証試験で明確な温度差を確認できなかった要因を踏まえ、試験方法を変更して再比較を行うものである。
熱容量体であるガラスサンドを増量するとともに、断熱フィルム施工面と正対する位置に配置し、熱容量体から放射される熱がフィルム面へ直接届く条件を構成した。
フィルム未施工ガラスと断熱フィルム施工ガラスについて、試験箱内部の空気温度および蓋ガラス上面中央部の温度変化を測定し、断熱フィルムが熱の放射および伝達に与える影響を確認することを目的とする。
試験体
本試験では、断熱材で構成した試験箱の上部開口部に、A4サイズのフロートガラスを蓋として設置した。
蓋ガラスは、次の2種類を使用した。
試験体①
断熱フィルム「リフレシャイン TW36A」を施工したガラス
試験体②
フィルム未施工ガラス(ブランク)
TW36Aは、試験箱内部側となるガラス下面に施工した。
試験箱内部には、加熱したガラスサンドを入れた耐熱皿を配置し、熱容量体とフィルム施工面が正対する構造とした。
この配置により、ガラスサンドから上方へ放射される熱が、断熱フィルム施工面へ直接届く条件をつくった。
両試験体について同一の試験箱、熱容量体、測定機器を使用し、箱内部温度および蓋ガラス上面中央部の温度変化を比較した。
前回試験からの変更点
前回の試験では、円筒形グラスの底部にガラスサンド250gを配置し、グラス側面内側に断熱フィルムを施工していた。
今回は、前回の試験結果と考察を踏まえ、次の2点を変更した。
熱容量体であるガラスサンドを250gから500gへ増量
熱容量体を断熱フィルム施工面と正対する位置へ配置
前回は、ガラスサンドから放射される熱が、側面に施工したフィルムへ直接届きにくい構造であった。
今回は、熱容量体の量を増やすことで放熱の持続性を高めるとともに、フィルム施工面を熱容量体の真上に配置することで、断熱フィルムの遠赤外線反射特性が温度変化に表れやすい条件へ変更した。
試験条件
試験は、同一条件でブランクガラスおよび断熱フィルム施工ガラスについて実施した。
試験体
ガラス:フロートガラス A4サイズ(210mm×297mm)
フィルム:リフレシャイン TW36A(試験箱内側施工)
比較対象:フィルム未施工ガラス(ブランク)
熱源
蓄熱体:ガラスサンド
使用重量:500g
加熱開始温度:約80℃(79.8℃)
加熱方法:フライパンによる加熱
容器:耐熱皿
測定条件
室温:約27℃
試験箱:断熱材製試験箱
ガラスは試験箱の蓋として設置
蓄熱体は試験箱内中央に配置し、ガラス下面(フィルム施工面)と正対する位置とした。
測定項目
試験箱内部空間温度
蓋ガラス上面中央温度
測定時間
試験開始から60分まで、一定時間ごとに測定を実施した。
試験方法のポイント
本試験では、前回試験の反省を踏まえ、熱容量体(ガラスサンド)の重量を500gへ増量するとともに、熱容量体から放射される熱(遠赤外線)が断熱フィルム施工面へ直接届く配置とした。
これにより、断熱フィルムの低放射性能がガラス表面温度および試験箱内温度に与える影響を比較した。
測定項目
● 試験箱内部空間温度
デジタル温度計を使用し、試験箱内部中央付近の空気温度を測定。
● ガラス上面中央温度
放射温度計を使用し、A4ガラス上面中央部の表面温度を測定。
※測定位置は「試験体構成図(断面)」を参照してください。
試験結果
試験方法の見直しにより、ガラス表面温度に差が現れる傾向を確認しました。
前回の試験では、予想していたほどの温度差は確認できませんでした。
そこで今回は、試験方法を見直し、熱容量体の増量および熱容量体とフィルム施工面を正対配置した条件で再試験を行いました。
その結果、試験箱内部空間温度には大きな差は確認できなかったものの、ガラス上面中央温度ではブランクガラスに比べてTW36A施工ガラスの方が継続して低い傾向が確認されました。
今回の結果から、試験方法を見直したことにより、断熱フィルムの低放射性能による影響が、ガラス表面温度の違いとして現れた可能性が示されました。
試験結果(要約)
◎試験箱内部空間温度は、ブランクガラスとTW36A施工ガラスで大きな差は確認されませんでした。
◎一方、蓋ガラス上面中央温度は、TW36A施工ガラスの方が測定期間を通じて低い温度で推移しました。
◎最大温度差は約**1.5℃**でした。
◎前回試験では確認できなかったガラス表面温度の違いが、本試験では確認されました。
考察
前回の試験では、ブランクガラスと断熱フィルム施工ガラスとの間に、予想していたほどの温度差は確認できませんでした。
そこで今回は、熱容量体であるガラスサンドを250gから500gへ増量し、さらに熱容量体とフィルム施工面が正対する配置へ変更しました。
その結果、ガラス上面中央温度には一定の差が見られたものの、試験箱内部空間温度はブランクガラスとTW36A施工ガラスでほぼ同様に推移しました。
このため、今回の試験においても、断熱フィルムによる明確な保温効果を確認することはできませんでした。
ガラス上面温度の差については、フィルムがガラス面の熱の伝わり方や放射に影響を与えた可能性があります。一方で、試験箱内部の温度維持につながるほどの差としては現れませんでした。
今回の試験では、熱容量体の増量や配置の変更など、簡易試験として可能な範囲で条件を見直しました。しかし、それでも箱内温度に明確な差が生じなかったことから、本試験装置では断熱フィルムの断熱性能を評価すること自体が難しいと考えます。
断熱フィルムの性能をより正確に評価するには、熱流計、恒温環境、温度制御された大型試験体など、専門的な設備が必要になると考えられます。
したがって、本試験は断熱性能を証明する結果ではなく、簡易的な温度比較試験では断熱フィルムの効果を明確に可視化することが難しいことを確認した試験としてまとめます。
この試験で最も印象に残ったこと
断熱性能そのものよりも、その性能を正しく、分かりやすく説明することの方がはるかに難しい
正直に言うと、今回も結果は当初の予想とは異なっていた。
前回は試験方法に課題があると考え、熱容量体の重量を増やし、さらに熱容量体と断熱フィルム施工面を正対させるなど、試験条件を見直して再検証を行った。
しかし、その結果でも、試験箱内部空間温度に明確な差を確認することはできなかった。
私は以前から断熱フィルムの性能説明に違和感を持っていた。
「暖かい」
「熱を逃がしにくい」
「断熱効果がある」
もちろん、それらは間違いではないのだろう。
しかし、今回の再試験を通じて改めて感じたのは、断熱性能そのものよりも、その性能を正しく、分かりやすく説明することの方がはるかに難しいということである。
今回の試験では、ガラス表面温度には一定の違いが確認できたものの、それだけで「断熱性能が確認できた」と結論付けることはできない。
だからこそ私は、実証試験では都合の良い結果だけを示すのではなく、期待した結果が得られなかった事実も含めて公開することに意味があると考えている。
今後も、結果ありきではなく、「なぜそうなったのか」を考えながら検証を続けていきたい。